Story

「ギリシャ悲劇」『ハムレット』から、『汚れたダイヤモンド』へ――。 永遠の“父と息子”の物語は、この映画により次のステージへ。

フランス、パリ。強盗に明け暮れるピエールは、15歳から音信不通だった父が死んだことを突然知らされる。アントワープのダイヤモンド商家生まれの父は、ダイヤの研磨作業中に不慮の事故で手先を失い、その後精神を病み、家族の前からも姿を消し、野垂れ死んだのだ。それを知らされたピエールは、生家から追放された父の過去とみじめな最期に、父の兄ジョゼフを長とする一族への復讐と、ダイヤの強盗を誓う。舞台はパリから、ベルギーのアントワープへ。しかし生まれて初めてダイヤモンドに触れたピエールは、自分の体内に流れる、父から受け継いだ血が騒ぎだすのを感じるのだった。そしてそれは、悲劇への序章でもあった――。

Introduction

フランスの新星 アルチュール・アラリ監督 × ニールス・シュネデールによるノワール映画の真骨頂

2016年のフランス映画界で、最も傑出した才能の出現として話題になったアルチュール・アラリ監督による、フィルム・ノワールが誕生。自らがシェークスピアの『ハムレット』を下敷きにしたと語っているように、本作には<父と息子>という永遠のテーマが通奏低音のように流れている。原石のダイヤモンドに眠る、煌めく輝きと、坩堝のような深く暗い欲望。それを知ってしまった者には、もはや安穏は許されないのだった――。

監督のアルチュール・アラリは、本作において、フランス映画批評家協会・新人監督賞、リュミエール学院が主宰するジャック・ドレー(推理映画)賞、ボーヌ国際探偵映画祭・審査員賞およびクロード・シャブロル賞を受賞している。

主演のニールス・シュネデールは、本作でフランス映画アカデミー・セザール新人男優賞を獲得。また強盗の参謀役ラシッドを演じ、本作出演後に亡くなったアブデル・アフェド・ベノトマン(映画の冒頭で献辞を捧げられている)は、実際 “元服役囚” であり、現代を代表するフランスのノワール作家である。当初ラシッド役はアブデラティフ・ケシシュ監督に依頼されたが、ケシシュはベノトマンをアラリ監督に推薦したという。そしてロレーン・バコールを想起させるラファエル・ゴダンなど映画を彩る俳優陣も興味深い。

果たしてピエールの復讐は成就されるのだろうか? 映画は、まったく意想外な展開を示しながら、ラストで、ピエールに対してある深いモラルの決断を強いる。『汚れたダイヤモンド』は、ここで単なる犯罪映画の枠を超え、大いなる世界への導きを許すのであった――。